先生、あのね。
ずっと隠していた事が、あります。
これは入学時からの想いなのに、私は自分を誤魔化してきました。
間違いだ、いけないんだと自分に言い聞かせ、閉じ込めてきた想い・・・
先生、好きです・・・
図書委員に所属する、引っ込み思案な性格の楓は生物教師である上原に恋をしている。
入学したその日からの恋心は変わる事もなく、現在三年目に突入。
だが授業以外で関わる事もなく、女生徒からの人気も高い上原には近付けず、
楓はその想いを上原に決して打ち明けずに秘めていた。
そんなある日の事。
いつものように図書館の閉館作業を終え、遅い下校をする楓の前に上原が現れたのである。
高校は自宅からずいぶん離れた位置にあり、上原に会うとは思ってもみなかった楓だが、
浮かれた気分は一瞬で吹き飛んでしまう。
何故なら上原は、決して学校では見る事の出来ない涙を流していたからである・・・
恋人にフラれた憧れの教師は、不思議な事に自分の胸で涙を流す。
この奇妙な体験が、楓の最後の高校生活を変えたのだ・・・